「玩具修理者」――メルヘンとサイケデリックな映画
忍成修吾さんが好きで出会った映画です。
原作は小林泰三のホラー小説。第2回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作です。
玩具というメルヘンなモチーフと、
あまりに美しく幻想的な世界観がとても気に入りました。
なかでもエンドロールの音楽は暖かなオーロラ(矛盾していますが)のようです。
「ようぐそうとほうとふ」という響きはどこか子守唄のようで、
よくできていると思います。
クトゥルー神話の神からきている名前だそうですね。
映画もそうですが原作も素晴らしく、
物書きとして勉強になります。
原作は結構グロテスク描写もあるのですが、そのあたりはうまく演出。
子どもの描いたような絵で描写していましたが、
本当に子どもの描いた絵だったらもっと趣き深いかも。
若かりし日の忍成修吾や子役の演技が拙くて、
そこがまた幻想的な味わいを深めています。
夢って淡々としているじゃない。そんなかんじ。
田中麗奈は少し明るすぎたかな。
もうすこしミステリアスなお姉さんをイメージしていたのですが。
忍成君のお姉さんにしては若すぎますが、
小松菜奈や水原希子、橋本愛のような女優さんの方があってるような気がします。
原作の、何度も何度も玩具修理者のところに通う描写が好きだったのですが、
本作ではたった2回でしたね。
何度も何度も「修理」してもらうことで、
人間とは何か、生き物とは何かが本当にわからなくなってしまうほどぐちゃぐちゃになっていく感じが、原作での味だったかと思います。
問題提起感もいいですね。
人間とモノとの違いは何か。心とは何か。
これだけ書くと陳腐ですが、それが陳腐だと思えない描写の仕方をしている点に原作者と監督の妙を感じます。
気になる方はぜひご覧ください。